抹茶の風味についてお伝えしたいこと
日頃より私どもの抹茶をお召し上がりくださり、ありがとうございます。
また、新たに抹茶へ関心をお寄せいただき、私どもの商品を手にとってくださいましたお客さまにも、そのご縁に感謝申し上げます。
近頃、私どもの抹茶の風味に対して、お声をいただく機会が増えてまいりました。そこで、そもそも抹茶の風味が生まれる背景と、それに対する私どもの考え方についてご案内いたします。
一保堂の抹茶の味わいづくり
私どもの抹茶は、単一茶園で生み出されるものではなく、複数の茶園のものをブレンド(合組・ごうぐみ)しながら仕上げています。これは、味わいの複雑性を生み出すことと、安定的な風味や品質を維持することを目的としています。
ブレンドで重視する基準としては、味わい、香りといった風味に加えて、色味の要素も考慮しています。とりわけ、最も重視しているのが味わいです。口に含んだ時の旨みとコク、そして後口の余韻が、それぞれのランクに応じたものとして適しているかを重視しています。
香りについては、欠点になるような香り、たとえば煙のような香りがないか、そのランクにふさわしい香りであるかを確認しています。
色味についても、ランクにふさわしいかどうかを見ています。高いランクであるほど鮮やかな緑色で、低くなるにつれてやや黄色味や白味が混じった緑色となり、質感もマットになっていきます。
抹茶の風味が生まれる背景
抹茶、玉露、煎茶、番茶は、いずれもチャノキの葉を原料とする日本茶です。 栽培方法の違いによって、それぞれに異なる個性が生まれます。
そもそも、抹茶や玉露は、新芽が出てきた頃に一定期間、陽の光を遮って育てます。この育て方によって渋みが抑えられ、旨み・甘みが濃厚になり、香りも変化します。
陽の光を十分に浴びながら育つ煎茶や番茶は、鼻筋をスーッと抜ける爽快な香りが特徴です。
一方で、陽の光を遮って育てる抹茶や玉露は、鼻の中にこもるような香りに変化します。その香りは、海藻のような、海を思わせるものとなり、十分に陽の光が遮られたものほど、より強く感じられます。
また、抹茶や玉露のチャノキは、成育のために本来必要な太陽光が制限されることにもなります。そのため弱ったチャノキを回復させるために、肥料を十分に施す必要があります。この肥料の内容もまた、独特の風味を生み出す一因になります。
抹茶のランクの違いについて
この抹茶や玉露の特殊な育て方は、肥料を施していてもなお、チャノキにストレスがかかります。そのため、最上級の抹茶は年に1回しか作らないことも少なくありません。
一方で、ランクが低くなるにつれて、年に複数回作られるようになります。
秋頃に作られるものは、春から初夏とは陽の光の条件も異なります。日陰にせずとも濃い緑色となるため、陽の光を遮らずにそのまま作られ、主にお菓子の原料に使われることになります。
海藻のような、海を思わせる香りについて
私どもの抹茶で上級ランクのものに対して、海藻のような、海を思わせる香りを感じられ、茶葉らしくないと違和感を覚え、お問い合わせをいただくことがございます。
これは、旨みや甘みを最大限に引き出すために、陽の光を十分に遮って育てたがゆえに生まれる、抹茶ならではの独特の香り。むしろ、上質な証でございます。
お客さまからのお声とともに
私どもの商品作りでは、この陽の光を遮って生まれる香りについて、ロットごとに強弱はありながらも、全体として一定の幅の中におさまるように取り組んでおります。
しかし、この香りに驚かれるお客さまがいらっしゃるのも事実です。
そのため、より多くのお客さまに喜んでいただけるモノづくりを、お客さまと対話しながら進めていきたいと考えております。
まずはこの海藻のような、海を思わせる香りが生まれる背景と、私どもの現時点での考えをお伝えし、今後のお客さまとの更なる対話のファーストステップにしたいと考えております。
何かお気づきの点、ご不明な点がございましたら、お気軽にお申し付けくださいませ。 引き続きのご愛顧をよろしくお願い申し上げます。
株式会社 一保堂茶舖
代表取締役社長 渡辺正一